物語を書いてみて気付いた「悪役という幻想」と他者理解の話

創作裏話

こんにちは、紡綺ひろかです。

いきなりですが、「悪役」って好きですか?

ドラマや小説、アニメなど、物語には欠かせない存在のあの「悪役」です。

私は小さい頃「悪役ってみんなに嫌われてるよね」と無意識のうちに思っていたのですが、いざ大人になって周りを見渡してみると、悪役だけど好かれているキャラクターが存在することに気付きました。

いやいや、そんなわけないでしょ…。

だって悪いことしてるから悪役なんでしょ?人を傷付けてるんでしょ?悪役を好きになるなんてそんな…

なんて思っていたのですが、自分で小説を書くことにチャレンジしてから少し見方が変わりました。

今回はそんな「悪役という幻想」についてのお話をしたいと思います。

「幻想??」と思われるかもしれませんが、追ってご説明していきますね。

悪役を考えるきっかけ

以前、とある小説を書いていたとき、そのストーリーの流れで悪役が必要になりました。

となると、その悪役(以後、Aさんとします)のキャラクターも詳しく考えなくてはなりません。

おそらく、生まれたその瞬間から悪いことばっかりしてましたという人間はほとんどいないと思います。
(※Aさんは一応人間です)

ほとんどの「悪人」と呼ばれる人たちは何らかのきっかけで悪に染まる…はずです。

通称「闇堕ち」です。

たとえ小説内でAさんの闇堕ちについて触れる必要がなかったとしても、作り手としてははっきりさせておく必要があります。

そうでなければ、「何でこんなことするの!」と主人公に聞かれても、その答えの台詞が曖昧になってしまいます。

なので、Aさんがどんな過去を背負ってこうなったのか、時間を取って考えました。

「悪役」でない時期は…

すると、Aさんがまったくもって悪役でない時期の想像もできました。

周りの人と楽しく、未来に希望を持って生き生きとしていた頃。

あることがきっかけで絶望を感じ、甘い言葉に乗せられて悪に手を染めてしまった瞬間。

もしかしたら改心し、誰かを救うかもしれない未来。

作者(私)は気付きました。

「私はAさんの、悪役と言える部分だけを切り取っているだけだ」

と。

もし、この物語がAさんの改心した後の話だったなら、Aさんは悪役ではない。

たまたま別の人が主人公だったから、Aさんはこの物語で悪役だったんだ…と。

そうすると、考えたくないかもしれませんが、主人公が悪役になる物語を切り取ることもできます。

「桃太郎は人間側から見れば英雄だが、鬼側から見れば悪魔だ」という考え方もあります。

歴史書でも、書いた人が政権を取った側かそうでないかで人の評価がまったく異なる、ということがあります。

Aさんも、ある人にとっては敵であり、ある人にとってはかけがえのない存在なのです。

「悪役」というのは幻想だった

ここで私は、悪役でも好きになる理由がなんとなく理解できました。

その物語では悪役だし誰かを傷付けているけれど、それはその人の一部分を示しているに過ぎない。

見方によって、それ以外の何か(見た目かもしれないし、口調や裏の性格かもしれない)に魅力を感じることがあるのは自然なことだった。

というか、自分で設定したAさんという悪役のことも、本気で嫌いになることはできませんでした。

Aさんには良さと悪さ両方あったからです。

私がAさんの物語の「悪人」の部分だけを切り取っていただけの話なのです。

悪役と決めたのは私の頭の中でのこと。

頭の中でのことは実在するわけではないので「幻想」だとお話ししたのです。

まあ、Aさんの存在自体も幻想なのですが、仮に実在していたとしても「悪役」と決めること自体は幻想になるんだね、ということなのです。

おわりに

今回私が何を言いたかったのかと言いますと…

「今見えているその人の悪人っぷり(&善人っぷり)は、その人のほんの一部でしかない」ということに気付いたよ、ということです。

なんだか哲学的な話になってしまいましたね。

これに気付いたからと言って現実の嫌な人を許せるかって言われたら、そんな簡単にできることじゃないと思います。

でも、見方が広がることで、私は他人について理解できることが以前より増えたような気がします。

その程度のお話ではあるのですが自分にとっては驚きで、ずっと誰かにシェアしたいな〜と思っていたので、ここでお話ししてみました。

これもまたチャレンジ。

少し難しいお話だったかもしれませんが、ここまで読んでくださりありがとうございました。

それでは、また。

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